ハースト少佐の尽力でなんとか建て直しをはかったフォルクスワーゲンの工場ですが、さらに業績を伸ばすために招かれたのが元オペルの工場長であったハインリッヒ・ノルトホフでした。
フォルクスワーゲンの工場長に就任すると、彼はオペル時代にGM視察旅行で得たアメリカ式自動車生産・販売のノウハウを早速採り入れ、自分の工場で作っているフォルクスワーゲンを分解し徹底的に調べその性能を確信します。
そしてフォルクスワーゲンがいかに素晴らしいクルマであるか、またそこで働く事の素晴らしさを伝えることで、パートナーとの堅い信頼を築きました。
最新鋭の設備を導入するだけでなく、従業員一人一人に誇りを持たせるというフォルクスワーゲンの気風はノルトホフが生みだしたと言えるでしょう。
ノルトホフの工場長就任の翌年、フォルクスワーゲンを管理下に置いていた連合国が話し合いによりフォルクスワーゲンをどうしようか議論していたのですが、「フォルクスワーゲンに価値はない」と出席者の一人であるアメリカのフォードモータースの社長であったヘンリー・フォードU世が言い放ち、結局それが連合国の意見となり無償でドイツ連邦に返されることになったのでした。
皮肉なことに今日では、フォード・モータースが販売不振で苦しんでいるのを横目にVWは好調です。
それもフェルディナンド・ポルシェ博士の天才的な設計と、アイヴァン・ハースト少佐による終戦後の混乱からの工場再生と、ハインリッヒ・ノルトホフが従業員のモチベーションや自動車のクオリティを高めたことによって、企業の価値が飛躍的に上がったからです。
この三人の男やそれに関わったすべての人たちの弛まぬ努力と不屈の精神によって、今日の繁栄を享受できていることを忘れてはならないのです。